2026年11月5日(木)10時30分から、ゆる歴史散歩会の6人で東京都豊島区西巣鴨の大正大学を訪れ、創立100周年記念行事「百観音お砂踏み」を体験しました。キャンパスには100周年の記念装飾が並び、百観音巡礼の文化に触れながら、VRシアターの案内や「すがも中山道菊まつり」に向けた菊花展示も見て回りました。当日は人が少なく、各スポットをスムーズに見学できました。

大正大学の門には、創立100周年を祝うバナーと花が飾られていました。雨に濡れた路面とキャンパスの木々も印象に残る景色です。
大正大学創立100周年記念|1926年の開学から「第二の開学」へ
大正大学は1926年(大正15年)創立の仏教系大学です。建学の理念として「智慧と慈悲の実践」を掲げ、2026年11月5日に100周年を迎えました。大学はこの節目を「第二の開学」と位置づけ、生涯学習や地域との連携を含めた新しい取り組みを発信しています。創立100周年記念週間は11月1日から7日まで設定され、学生企画や学部別イベントなどが開かれました。

会場の建物前にあった「大正大学」のサインからも、記念行事の雰囲気が伝わります。歴史ある仏教教育と、現代の大学教育が同じキャンパスで展開されていることも、この日の見どころでした。
総合受付で100周年のパンフレットを受け取る
まず総合案内所で、大正大学創立100周年のパンフレットをいただきました。表紙には「NEXT 100 Years」の文字と大学生活の写真が配され、次の100年への思いを伝えるデザインになっていました。

無料のMemorialクイズラリーにも参加

「100周年Memorial クイズラリー」は参加無料で、大正大学の100年の歴史をたどる企画でした。受付の掲示には、約10分の短時間コースと約30分の普通コースがあり、参加賞のステッカーと100周年記念Tシャツが紹介されていました。普通コースでは、さらに景品が当たる抽選への挑戦も案内されていました。私たちも参加し、紫色の記念Tシャツをいただきました。無料でTシャツまでいただけるとは、うれしい驚きです。当日受け取れたサイズはLのみでした。

大学が公開している「大正大学100年のあゆみ」では、創立から戦後の大学改革、現在までの出来事が年代別にまとめられています。100周年の背景をさらに知りたい方には役立つ資料です。
公式キャラクターT-DUCKにも出会いました
100周年記念イベントの会場には、大正大学公式キャラクター「T-DUCK(ティー・ダック)」も登場。大きな白い姿と黄色いくちばしが目を引き、来場者との記念撮影が行われていました。大学の記念行事ならではの楽しい一場面です。
- 100周年記念イベントに登場した大学公式キャラクター「T-DUCK(ティー・ダック)」。
椎尾弁匡の胸像と大正大学の歩み
キャンパス内では、椎尾弁匡の胸像も見かけました。現地の説明板によると、椎尾は1876年に生まれ、浄土宗の教育事業に携わり、1926年の大正大学設立時に教授となりました。第6・9・14代学長を務め、『浄土宗全書』の刊行を進めた人物です。宗教教育だけでなく教育制度の改革にも取り組み、没後にキャンパスへ胸像が建てられました。
- 大正大学の第6・9・14代学長を務めた椎尾弁匡の胸像と説明板。
南三陸の復興を願う「ゆめ多幸鎮オクトパス君」
南三陸復興市に関連して、赤い「ゆめ多幸鎮(たこちん)オクトパス君」のモニュメントも見ました。設置された説明板によると、「置くと(試験に)パスする」という言葉遊びから誕生した宮城県南三陸町の合格祈願グッズが原点です。2011年の東日本大震災の津波で町の工房などが被災し、残った一体を手掛かりに、大正大学が復興支援の取り組みの中で大きなモニュメントや複製品の制作に携わりました。大学と被災地の交流を伝える展示です。
- 南三陸町との絆を伝える「ゆめ多幸鎮オクトパス君」のモニュメント。合格祈願と復興の願いが重なります。
- 「ゆめ多幸鎮オクトパス君」の解説板とモニュメント。震災後の南三陸町と大正大学の交流が紹介されていました。
百観音お砂踏み|西国・坂東・秩父の100札所を一度にたどる

今回の中心企画は、仏教学部が7号館1階で実施した「百観音お砂踏み」です。公式案内によると、西国三十三所、坂東三十三観音、秩父三十四観音の各札所のお砂を設け、学生が準備と運営に携わりました。案内ポスターには三つの霊場が描かれ、全国に広がる観音巡礼の範囲が分かるようになっていました。
御影とお砂が並ぶ会場を歩く
会場の床には赤い敷物が広がり、札所ごとのお砂を納めた区画が続いていました。両側の展示パネルには、各札所の観音像の御影と朱印が並び、順に歩きながら一つひとつ見比べられる配置です。参加者が少なかったため、落ち着いて参拝しながら見学できました。
- 7号館のお砂踏み会場。札所ごとの観音像の御影が掲げられ、足元にはお砂を納めた区画が続いていました。
- 西国三十三所の第一番・青岸渡寺と第二番・紀三井寺。御影と朱印を並べた展示から札所の違いを学べます。
- 両側に札所の御影が並ぶお砂踏みの通路。赤い床に札所の砂を納めた区画が設けられていました。
展示には西国三十三所の第一番・青岸渡寺、第二番・紀三井寺の御影と朱印もありました。各札所で信仰される観音の姿や、巡礼で授かる朱印を一緒に見られる点も、お砂踏みの理解を深めてくれました。
なぜ「百観音」なのか
西国三十三所は近畿地方を中心とする観音霊場、坂東三十三観音は関東各地に広がる札所群、秩父三十四観音は埼玉県秩父地方の霊場です。33+33+34で合計100札所となり、「日本百観音」と呼ばれます。秩父札所の公式案内によると、16世紀の古札に「西国坂東秩父百ヶ所」という表記が残り、三つの巡礼を一体として捉える信仰の歴史がうかがえます。
各霊場を実際に巡るには長い移動が必要です。坂東三十三観音だけでも、公式サイトが案内する全行程は約1,300km。お砂踏みは、各札所に由来する砂を踏みながら礼拝し、遠方の巡礼を身近に感じるための参拝方法です。巡礼先の土地と参拝者を結ぶ象徴的な体験であり、各札所での参拝と同じ功徳があると信じられてきました。
秩父札所34番の水潜寺は、日本百観音の結願寺として知られます。同寺の公式案内には百観音の砂を納めたお砂踏みも紹介されています。こうした各地の信仰文化に、東京の大学という場所で触れられたことが今回の魅力でした。
すがも中山道菊まつり|江戸の園芸文化を受け継ぐ秋の花
キャンパスの鴨台観音堂周辺には、白・黄・桃・赤など色とりどりの菊が並んでいました。写真に写るのは、2026年の第34回「すがも中山道菊まつり」に向けた展示風景です。巣鴨地蔵通り商店街の発表による2026年の開催期間は11月6日~14日。訪れた11月5日は開幕前でしたが、会場の菊を眺めることができました。

菊まつりが1993年に始まった背景には、巣鴨がかつて園芸の盛んな地域だった歴史があります。旧中山道沿いには植木職人が多く、江戸時代の駒込・巣鴨は菊の名所として知られました。花をただ並べるだけでなく、菊を仕立てて形や景色を作り出す技術も発達しました。

白い菊には細かな花弁が幾重にも重なり、黄色い菊には管状の花弁が外へ伸びるものもあります。商店街の菊まつり解説では、花弁がこんもり盛り上がる「厚物」と、細い管が放射状に伸びる「管物」などの特徴が紹介されています。近くから花形を見比べるのも楽しみ方の一つです。

赤や黄の菊の奥に、桃色や橙色の鉢植えが並び、濡れた花びらが光っていました。江戸の人々が秋の「菊見」を楽しんだ風景を、現在の巣鴨で思い起こさせる展示です。

商店街の案内によると、2026年は大正大学の鴨台観音堂のほか、眞性寺や巣鴨の商店街などでも菊を展示する計画です。菊まつりは地域の商店街、寺院、町会、大学などが協力して続けてきた行事で、会期中は菊見茶屋も予定されています。今後訪れる際は、年ごとの会期や会場を商店街の公式案内で確かめると安心です。
大正大学VRシアター|文化財をデジタルで体験する学びの場
創立100周年記念事業の一つが、新設されたVRシアターです。大学のデジタル文化財情報学科では、文化財の3Dモデル化やデジタル技術による保存・活用を学びます。配布資料によると、TOPPANが制作に携わったシアターは横約9.75m・縦約5.49mの大型8K LEDカーブディスプレイと5.1chの立体音響システムを備えています。映像を全画面で再生する「上映モード」、授業・講演に対応する「プレゼンテーションモード」、複数の映像を組み合わせる「アドバンスモード」の3種類が案内されていました。配布資料には、仏像などの文化財を高精細な映像で映す活用例も掲載されています。
新しいVRシアター棟は、コンクリートの立体的な外壁とガラス張りの入口が特徴です。建物を別の角度から眺めると、映像設備のための空間が独立した建築として整備された様子が分かります。
- 大正大学の新設VRシアター棟。コンクリート外壁とガラス張りのエントランスが目を引きます。

建物の外壁には「VRシアター誕生」の大きな案内が出ていました。文化財は現地で見ると大きさや質感を感じられますが、デジタル映像なら、普段立ち入れない場所や失われた景観を学ぶ方法も広がります。保存・調査のために作られたデータを教育へ生かす点にも、大学施設ならではの役割があります。

見学受付には11月5日の上映スケジュールが掲示され、約20分の上映枠が複数設けられていました。14時から16時には鴨台会の専用枠という案内も見えます。一般向けの見学条件は企画ごとに異なるため、利用を検討する場合は大正大学デジタル文化財情報学科の案内と大学のイベント情報を確認してください。
すがも鴨台観音堂|八角形と二重らせんの建築

菊に囲まれた「すがも鴨台観音堂」は2013年に建てられた仏教文化施設で、「鴨台さざえ堂」の愛称でも知られます。八角形の建物には、上りと下りの動線が交わらない二重らせん構造が採用されています。大正大学によると、この構造を巻き貝のサザエになぞらえたことが通称の由来です。堂内の最上階には聖観自在菩薩が安置されています。
外観には八角形の屋根や縦格子が重なり、入口には五色幕が掛かっていました。建物の周りに並ぶ菊の花が、観音堂の建築をいっそう引き立てていました。
さざえ堂前に移された種子地蔵
観音堂の近くには、種子地蔵がありました。以前は中山道沿いに設置されていたお地蔵様で、VRシアター棟の新設に伴い、さざえ堂の前へ移されていました。鉢を抱える両手と穏やかな表情が特徴で、当日は周囲を色とりどりの菊が囲んでいました。
- 菊に囲まれた「種子地蔵」。旧中山道の種子屋街道の歴史を伝える地蔵尊です。
- 鉢植えの花を抱える種子地蔵。背後の穏やかな表情まで近くで見ることができます。
巣鴨の歴史散歩に広げるなら
大正大学の周辺は旧中山道と観音信仰、植木・園芸の歴史が重なる地域です。板橋から巣鴨へ旧中山道を歩いたレポートでは、大学周辺から巣鴨庚申堂、とげぬき地蔵方面の歴史を紹介しています。東池袋・大塚・千石・巣鴨を歩いた記録は、巣鴨の街を都電や近代史の視点から楽しむ参考になります。
ゆる歴史散歩会では、寺社仏閣や大学、季節の行事、地域史をテーマにした企画を開催しています。参加を検討する方はイベント一覧をご覧ください。
TimeWalkで身近な歴史スポットを探す
街歩きの際には、現在地や指定した場所の近くにある歴史スポットを地図で探せるWebアプリ「TimeWalk」も利用できます。今回のイベントでは使っていませんが、自分で歴史散歩を楽しみたい方に向けたサービスです。
