早川俊男と江戸手描提灯の歴史|1914年創業の早川商店と板橋の文字描き職人

板橋区大谷口上町の早川商店は、大正3年(1914)に創業した提灯の店です。三代目の早川俊男(はやかわ・としお)は、提灯に文字や絵を筆で描き入れる職人として技術を継承してきました。「提灯(手描き)」の技術は平成31年(2019)3月11日に板橋区登録無形文化財(工芸技術)となり、早川が技術保持者に認定されました。

江戸時代に広がった提灯と文字描き

提灯は紙を張った胴の内部に灯りをともす道具で、日本では16世紀初め頃から使われたとされます。江戸時代中頃には町人の暮らしにも普及し、持ち歩く灯りのほか、商店の軒先や寺社の祭礼にも用いられました。

提灯には屋号、奉納者の名前、祭礼の文字、紋などが書き入れられました。文字の大きさや配置は、提灯の形と用途によって変わります。こうした需要に応じて、提灯の表面に筆で文字や絵を描く職人の仕事が発達しました。東京都はこの技術を「江戸手描提灯」として伝統工芸品に指定しています。

1914年に始まった早川商店

早川商店の創業は大正3年(1914)です。東京で提灯を扱う仕事を続けてきた家で、後に板橋区大谷口上町へ拠点を移しました。早川俊男は昭和6年(1931)に生まれ、昭和25年(1950)に父に弟子入りして提灯の文字描きを学びました。

長年の仕事の中で、祭礼や商いなどのために使う提灯の文字を描き続けました。型で同じ図案を大量に印刷する方法とは異なり、手描きでは筆の運びや墨の濃淡、文字の形を一つずつ調整します。提灯の丸い表面に合わせて文字を収める技術には、繰り返しの制作を通じた経験が生かされています。

2019年の無形文化財登録

板橋区は平成31年3月11日、「提灯(手描き)」を登録無形文化財(工芸技術)とし、早川俊男を保持者に認定しました。板橋区の文化財制度では、建物や古文書などの物だけでなく、職人が身に付けて受け継いだ制作技術も保護の対象となっています。

早川商店の仕事は、令和7年(2025)の板橋区伝統工芸展でも区の無形文化財技術として紹介されました。令和8年(2026)には南常盤台天祖神社の境内に開かれた「TORII茶寮」の提灯にも早川の手描きの仕事が使われています。大谷口で受け継がれた文字描きの技術は、現在の地域の施設や祭礼にもつながっています。

所在地と関連する伝統工芸

早川商店の所在地として板橋区が案内するのは大谷口上町7番5号です。制作や見学を希望する場合は、営業状況と受け入れ方法を事前に確認してください。板橋区内には友禅染や江戸筆などの伝統工芸も伝わっており、江戸手描友禅と寺澤森秋の歴史では、着物の染色を担う職人の仕事を紹介しています。

参考資料