サッカー日本代表を見るとき、監督だけでなく、一人ひとりの選手の経歴、役割、期待、実際の働きに目が向きます。内閣も同じです。首相だけでなく、どんな閣僚が選ばれ、何を任され、政権が終わるまでに何を残したのかを見ると、その政権の姿が立体的になります。
2020年9月16日に発足した菅義偉政権は、2021年10月4日の総辞職まで384日続きました。発足時の大臣に途中交代した2人を加えると、政権期間中に大臣を務めた政治家は23人です。新型コロナ対応と東京2020大会に追われる一方、デジタル庁、携帯電話料金、脱炭素、35人学級、不妊治療など、次の政権にもつながる政策が短期間に動きました。
まず分かる|菅内閣の閣僚23人
| 人物 | 役職 | 一言で分かる注目点 |
|---|---|---|
| 菅義偉 | 内閣総理大臣 | 官房長官を約7年8か月務めた実務型の首相 |
| 麻生太郎 | 副総理・財務大臣 | 首相経験者。安倍政権から財政運営を継続 |
| 武田良太 | 総務大臣 | 携帯料金改革を所管する総務省トップ |
| 上川陽子 | 法務大臣 | 法相経験者の再登板。少年法改正を担当 |
| 茂木敏充 | 外務大臣 | 通商交渉に強く、安倍政権から外相留任 |
| 萩生田光一 | 文部科学大臣 | コロナ禍の学校政策と35人学級を担当 |
| 田村憲久 | 厚生労働大臣 | 厚労相経験者。コロナ医療と社会保障を担当 |
| 野上浩太郎 | 農林水産大臣 | 初入閣。農業支援と輸出拡大を担当 |
| 梶山弘志 | 経済産業大臣 | 脱炭素と福島第一原発の処理水問題を担当 |
| 赤羽一嘉 | 国土交通大臣 | 公明党出身。観光・交通と流域治水を担当 |
| 小泉進次郎 | 環境大臣 | 脱炭素目標の具体化を担当 |
| 岸信夫 | 防衛大臣 | 初入閣。安倍晋三の実弟で外交・安保経験 |
| 加藤勝信 | 内閣官房長官 | 首相を支え、各省庁を調整する政権中枢 |
| 平井卓也 | デジタル改革担当→デジタル大臣 | デジタル庁創設を制度と組織の両面で担当 |
| 平沢勝栄 | 復興大臣 | 初入閣。震災10年と第2期復興を担当 |
| 河野太郎 | 行政改革・規制改革担当大臣 | 押印見直しとワクチン総合調整で前面に |
| 坂本哲志 | 少子化・地方創生担当大臣 | 初入閣。孤独・孤立対策も追加で担当 |
| 西村康稔 | 経済再生担当大臣 | 安倍政権からコロナ対策を継続 |
| 橋本聖子 | 五輪・女性活躍担当大臣 | 元五輪選手。途中で組織委会長へ転出 |
| 丸川珠代 | 五輪・女性活躍担当大臣 | 橋本の後任として東京2020本番を担当 |
| 井上信治 | 万博・科学技術・消費者等担当大臣 | 初入閣。科学技術、万博、消費者などを担当 |
| 小此木八郎 | 国家公安委員長・防災担当大臣 | 警察、防災、国土強靱化を担当 |
| 棚橋泰文 | 国家公安委員長・防災担当大臣 | 小此木退任後、政権末期の約3か月を担当 |
この組閣は何が特徴だったのか
菅義偉は第2次安倍内閣の発足から官房長官を務め、2020年9月に首相へ就任しました。組閣では、麻生太郎、茂木敏充、萩生田光一、小泉進次郎、西村康稔、赤羽一嘉、梶山弘志ら安倍政権の主要閣僚を続投させました。政権交代ではなく、同じ自民・公明連立の中で首相が交代したため、政策の継続性が顔ぶれにも表れています。
一方、岸信夫、野上浩太郎、平沢勝栄、坂本哲志、井上信治らは初入閣でした。上川陽子と田村憲久は過去に同じ省の大臣を経験しており、法務と厚生労働という専門性が問われるポストへの再登板です。河野太郎は防衛相から行政改革担当へ、加藤勝信は厚労相から官房長官へ移り、菅首相が掲げる規制改革とコロナ対応の中枢を担いました。
内閣の基本方針は「国民のために働く内閣」です。安倍政権の政策基盤を引き継ぎながら、縦割り、既得権益、前例主義を打破し、国民に近い課題を規制改革と行政改革で動かすことを前面に出しました。携帯料金の引下げ、行政のデジタル化、不妊治療支援を進める一方、2020年10月の所信表明では2050年カーボンニュートラルを宣言し、デジタルとグリーンを中長期の成長戦略にも位置づけました。歴代首相の中での位置づけは「歴代首相と近代日本政治の流れ」でも整理しています。
閣僚を一人ずつ見る
菅義偉

菅義偉が担った内閣総理大臣は、内閣を率い、各大臣を任命し、政府全体の政策を最終的に調整する役職です。秋田県出身で、横浜市議、衆議院議員、総務大臣を経て、安倍政権で約7年8か月官房長官を務めました。長期の官房長官経験から、各省庁の実務と調整に詳しい首相として発足しました。
就任直後から携帯電話料金、デジタル庁、不妊治療、規制改革を動かし、2020年10月には2050年カーボンニュートラルを表明しました。2021年にはデジタル庁が発足し、大手通信各社の低料金プランも始まりました。一方、政権後半はデルタ株による感染拡大と医療逼迫、東京2020大会への対応が中心となりました。2021年9月に自民党総裁選への不出馬を表明し、10月4日に内閣総辞職。退任後も衆議院議員として活動を続けました。
麻生太郎

麻生太郎の財務大臣は、国の予算、税制、国債、財政運営を担当します。麻生は首相、外相、総務相を経験し、第2次安倍内閣以来、副総理兼財務大臣を長く務めていました。菅内閣でも留任し、政権交代期の財政政策を継続する役割を担いました。
2021年度当初予算の一般会計総額は106兆6,097億円で、新型コロナ対策予備費5兆円を計上しました。感染対策と経済支援で財政支出が拡大する中、予算編成と財政運営を担当しました。菅内閣総辞職とともに財務相を退任し、その後も自民党の重鎮として国政に関わりました。
武田良太

武田良太の総務大臣は、地方自治、行政制度、放送・通信、電波、郵政などを担当します。武田は国家公安委員長、防災担当相などを経て総務相へ移りました。菅首相が強く掲げた携帯電話料金改革を所管する総務省のトップに就いたことが人事上の注目点でした。
在任中は通信各社の競争促進、料金プランの分かりやすさ、乗換え環境の改善などを進め、大手各社ではahamo、povo、LINEMOなどの低料金プランが始まりました。料金引下げは企業側の競争と政府の制度・政策が重なって進んだものです。2021年10月に総務相を退任し、その後も国政で活動しました。
上川陽子

上川陽子の法務大臣は、刑事・民事法制、出入国在留管理、矯正、人権、法務行政を所管します。上川は過去に法務大臣を経験しており、菅内閣で同じポストへ再登板しました。複雑な法改正を抱える法務省に経験者を置いた人事です。
2021年5月に改正少年法が成立し、18歳・19歳を「特定少年」と位置づけ、原則逆送対象の拡大や起訴後の実名報道解禁などを定めました。施行は2022年4月です。一方、2021年に提出された入管法改正案は菅政権中には成立しませんでした。退任後、2023年には外務大臣に就任し、担当分野を大きく変えて再び入閣しました。
茂木敏充

茂木敏充の外務大臣は、外交交渉、条約、在外公館、国際協力などを担当します。茂木は経済産業大臣や経済再生担当相として通商交渉を経験し、安倍政権から外相を留任しました。RCEPなど経済外交との接点が強い経歴でした。
2020年11月にRCEP協定へ署名し、2021年3月には初のQuad首脳会合、4月には菅・バイデン日米首脳会談が行われました。RCEP交渉自体は前政権以前から続いており、菅政権期に署名へ到達した政策です。菅内閣退任後は自民党幹事長に就きました。日本外交全体の流れは「歴代外務大臣と日本外交の流れ」でもたどれます。
萩生田光一

萩生田光一の文部科学大臣は、学校教育、大学、科学技術、文化、スポーツなどを担当します。萩生田は安倍政権から留任し、コロナ禍で学校現場が揺れる中、教育政策を継続して担当しました。
2020年12月に小学校35人学級で財務・文科両省が合意し、2021年に義務標準法を改正しました。GIGAスクール構想は安倍政権から始まった政策で、菅政権期には1人1台端末の整備が加速しました。菅内閣終了後、岸田内閣で経済産業大臣へ移り、教育から産業政策へ担当を変えました。
田村憲久

田村憲久の厚生労働大臣は、医療、年金、介護、雇用、労働、福祉、公衆衛生を担当します。田村は過去にも厚労相を務めた社会保障政策の経験者で、コロナ禍の厚生労働行政を任されて再登板しました。
2021年2月17日に国内の新型コロナワクチン接種が医療従事者から始まりました。最低賃金の全国加重平均は902円から930円へ上昇。改正育児・介護休業法で「産後パパ育休」を設け、不妊治療の保険適用も制度化を進めました。産後パパ育休と不妊治療の本格実施は次の岸田政権です。菅内閣終了後は厚労相を退任し、社会保障分野を中心に国政活動を続けました。
野上浩太郎

野上浩太郎の農林水産大臣は、農業、林業、水産業、食料政策、農林水産物輸出などを担当します。野上は官房副長官などを経験して初入閣しました。コロナ禍で外食需要が落ち込む中、農林漁業者支援と輸出拡大が主要課題でした。
輸出拡大策を継続し、2021年の農林水産物・食品輸出額は通年で1兆2,382億円となり、初めて1兆円を超えました。この数字には菅内閣総辞職後の10~12月も含まれます。菅内閣終了とともに農水相を退任し、その後も参議院議員として活動しました。
梶山弘志

梶山弘志の経済産業大臣は、産業政策、エネルギー、通商、中小企業、原子力政策などを担当します。梶山は地方創生担当相などを経て安倍政権から経産相を続投し、脱炭素と福島第一原発の廃炉・処理水という大きな課題を引き継ぎました。
2020年12月のグリーン成長戦略では洋上風力、水素、自動車・蓄電池など14分野を重点化し、2兆円のグリーンイノベーション基金を政策手段としました。2021年4月13日にはALPS処理水の海洋放出方針を政府が決定しました。実際の放出開始は2023年8月の岸田政権です。菅内閣終了後に経産相を退任し、国政で活動を続けました。
赤羽一嘉

赤羽一嘉の国土交通大臣は、道路、鉄道、航空、住宅、河川、観光などを幅広く担当します。公明党の赤羽は国土交通副大臣の経験があり、安倍政権から国交相を留任しました。自民・公明連立政権で公明党が国交相を担う流れも継続しました。
コロナで観光・交通業が打撃を受ける中、Go To トラベルと業界支援を担当しました。Go To トラベルは2020年12月28日から全国一斉停止となり、菅政権中に全国再開には至りませんでした。防災では流域治水関連法が成立し、一部が菅政権中に施行、全面施行は2021年11月です。退任後も国政活動を続けました。
小泉進次郎

小泉進次郎の環境大臣は、気候変動、廃棄物、自然環境、環境規制などを担当します。小泉は安倍政権から環境相を留任しました。菅首相が2050年カーボンニュートラルを宣言したことで、環境省側には具体的な削減目標を政策へ落とし込む役割が生まれました。
2021年4月、政府は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減し、50%削減にも挑戦する目標を決定しました。小泉は環境行政の側からこの目標の具体化を担当しました。菅内閣終了とともに環境相を退任し、その後も党・政府の政策議論で存在感を保ちました。
岸信夫

岸信夫の防衛大臣は、自衛隊、防衛政策、日米安全保障、防衛装備などを担当します。岸は外務副大臣などを経験し、初入閣で防衛相に就任しました。安倍晋三の実弟であり、外交・安全保障分野で活動してきた経歴も注目されました。
2020年12月18日、陸上配備型イージス・アショアの代替としてイージス・システム搭載艦2隻を整備する方針を閣議決定しました。2021年3月の日米2+2では同盟の抑止力・対処力強化を確認しました。菅政権後も岸田内閣で防衛相を続け、2022年に退任。2023年には衆議院議員を辞職しました。
加藤勝信

加藤勝信の官房長官は、首相を支え、各省庁の政策を調整し、政府の公式発表を担う政権中枢の役職です。加藤は厚生労働大臣としてコロナ初期対応を経験した直後に官房長官へ移りました。感染症対応の経験を持つ人物が政府全体の調整役になった点が人事上の特徴でした。
感染症、ワクチン、経済対策、東京2020大会など省庁横断の案件で政府方針を取りまとめ、日々の記者会見を担いました。菅内閣終了で官房長官を退任。その後、厚生労働大臣へ再登板し、さらに財務大臣も務めるなど重要閣僚を歴任しました。
平井卓也

平井卓也のデジタル改革担当大臣は、行政デジタル化と新たなデジタル庁創設を政府横断で進める役割でした。平井は自民党のIT政策に長く関わり、第4次安倍内閣でもIT政策担当相を経験していました。デジタル政策との経歴上の接点が明確な起用です。
2021年にデジタル社会形成基本法、デジタル庁設置法などが成立し、9月1日にデジタル庁が発足しました。同日、平井は初代デジタル大臣に就任しました。菅政権中に「構想→法成立→組織発足」まで到達した代表例です。菅内閣終了後はデジタル相を退任し、国会・党内でデジタル政策に関わりました。
平沢勝栄

平沢勝栄の復興大臣は、東日本大震災からの復興政策を政府横断で調整します。平沢は警察庁出身で、内閣府副大臣などを経験して初入閣しました。2021年に震災から10年を迎える時期の復興行政を任された人事でした。
2021年度から2025年度を「第2期復興・創生期間」とし、避難者支援、産業・生業再生、福島の復興・再生へ政策をつなぎました。ALPS処理水の処分方針も同じ政権期に決定されています。菅内閣終了で復興相を退任し、その後も国政活動を続けました。
河野太郎

河野太郎の行政改革・規制改革担当大臣は、省庁の手続や規制を見直し、政府全体の業務改革を進める役職です。河野は外務大臣、防衛大臣を歴任し、菅内閣では防衛から行政改革へ担当を移しました。菅首相の「縦割り打破」を実務で進める役割として注目されました。
政府が点検した1万5,611種類の行政手続のうち1万5,493種類、99.2%で押印廃止または廃止方針となりました。2021年1月からはワクチン接種の総合調整も担当し、自治体接種、大規模接種、職域接種の拡大局面で前面に立ちました。菅内閣退任後、岸田政権ではデジタル大臣を務めました。
坂本哲志

坂本哲志の少子化・地方創生担当大臣は、子育て支援、人口減少対策、地域活性化など複数省庁にまたがる政策を調整します。坂本は地方議員を経て国政入りし、初入閣しました。地方政治の経験と地方創生の担当に接点がありました。
2021年2月には菅首相から孤独・孤立問題の政府横断調整を追加で指示され、その後に担当室が設置されました。少子化対策に加え、コロナ禍で顕在化した社会的孤立を新しい政策分野として扱う役割を担いました。菅内閣終了後に退任し、後に農林水産大臣を務めました。
西村康稔

西村康稔の経済再生担当大臣は、成長戦略や景気対策などを政府横断で調整する役職です。安倍政権で新型コロナ対策を担当していた西村は菅内閣でも留任し、感染抑制と経済活動の両立という難しい仕事を継続しました。
営業時間短縮、イベント制限、まん延防止等重点措置など、事業者と国民生活に直結する行動制限策を担当しました。2021年夏にはデルタ株で医療逼迫が深刻化し、長期化する制限が大きな課題となりました。菅内閣退任後、岸田政権で経済産業大臣に就任しました。
橋本聖子

橋本聖子の五輪担当大臣は、東京2020大会に関する政府側の調整を担います。橋本はスピードスケートと自転車でオリンピックに出場した経歴を持ち、スポーツ行政との接点が強い政治家でした。安倍政権から担当を継続しました。
延期された東京2020大会の準備を進めていましたが、2021年2月18日に大会組織委員会会長へ就任するため大臣を退任しました。政府側の担当から大会組織委員会側のトップへ移った異例の交代です。その後は組織委会長として大会本番まで運営を担いました。
丸川珠代

丸川珠代は元テレビ朝日アナウンサーで、環境大臣と五輪担当大臣の経験がありました。2021年2月、橋本聖子の後任として再び五輪相に就任しました。大会本番まで残り約5か月という時期の再登板でした。
2021年7月、東京2020大会は緊急事態宣言下で開幕し、首都圏の多くの会場が無観客となりました。丸川は政府側の大会調整と感染対策を担当し、菅内閣総辞職まで務めました。大会後の晴海の変化は「東京2020選手村跡地・晴海ふ頭を歩く」でも紹介しています。
井上信治

井上信治は大阪・関西万博、科学技術、宇宙、消費者など複数分野を担当する内閣府特命担当大臣でした。環境副大臣などを経験して初入閣し、複数省庁をまたぐ政策の調整役を任されました。
2021年3月26日に第6期科学技術・イノベーション基本計画を閣議決定し、5年間の政府研究開発投資約30兆円、官民合わせて約120兆円を目標に設定しました。消費者分野では取引デジタルプラットフォーム消費者保護法も成立しました。菅内閣終了で退任し、その後も国政活動を続けました。
小此木八郎

小此木八郎の国家公安委員長は警察行政を管理し、防災担当大臣は大規模災害への政府対応を調整します。小此木は過去にも国家公安委員長を務めており、警察・防災分野への再登板でした。
菅政権期には重要土地等調査法が成立し、安全保障上重要な施設周辺や国境離島などの土地利用を調査する制度が法律化されました。2021年6月25日、横浜市長選への立候補に伴って大臣を退任し、棚橋泰文が後任となりました。市長選では落選し、その後は国政選挙へ戻らず政界を離れました。
棚橋泰文

棚橋泰文は科学技術担当相などを経験し、2021年6月25日に小此木八郎の後任として国家公安委員長、防災担当相に就任しました。政権終了まで約3か月という短期の交代で、警察・防災行政を引き継ぐ役割が中心でした。
在任中は豪雨・災害対応と公安行政を担い、新たな大型制度を立ち上げるより、既存政策の継続と危機対応に重点がありました。2021年10月の菅内閣総辞職で退任し、その後も衆議院議員として活動しました。
途中交代した2ポスト|前任と後任はどう変わった?
| 時期 | 前任 | 後任 | 交代理由・その後 |
|---|---|---|---|
| 2021年2月18日 | 橋本聖子 | 丸川珠代 | 橋本が東京2020組織委員会会長へ就任。丸川が五輪相へ再登板 |
| 2021年6月25日 | 小此木八郎 | 棚橋泰文 | 小此木が横浜市長選出馬のため退任。棚橋が公安・防災を引継ぎ |
就任時に期待された仕事はどうなったか
菅政権の政策は、政権中に実施まで進んだもの、菅政権で決定・法制化して次の政権で実施されたもの、安倍政権から引き継いだものに分かれます。この区別をすると、閣僚が在任中にどこまで仕事を進めたのかが分かります。
菅政権中に実施・発足まで進んだもの
| 政策 | 主な担当 | 政権終了時の到達点 |
|---|---|---|
| デジタル庁 | 菅義偉・平井卓也 | 関連法成立、2021年9月1日発足 |
| 2050年カーボンニュートラル | 菅義偉・小泉進次郎・梶山弘志 | 2020年10月に目標を表明し、2021年の改正地球温暖化対策推進法で2050年脱炭素を基本理念に位置づけ |
| 携帯電話料金 | 菅義偉・武田良太 | 大手各社の低料金オンラインプラン開始 |
| 新型コロナワクチン | 田村憲久・河野太郎・加藤勝信 | 接種開始、大規模・職域接種へ拡大 |
| 最低賃金 | 田村憲久 | 全国加重平均902円から930円へ |
| 小学校35人学級 | 萩生田光一 | 法改正、段階的実施開始 |
| 行政手続の押印見直し | 河野太郎 | 点検対象の99.2%で廃止または廃止方針 |
菅政権で決定・法制化し、後の政権で実施されたもの
| 政策 | 菅政権での到達点 | その後 |
|---|---|---|
| 不妊治療の保険適用 | 適用方針・制度設計、助成拡充 | 2022年4月開始 |
| 75歳以上の一定所得者の医療費2割負担 | 方針決定・関連法成立 | 2022年10月開始 |
| 産後パパ育休 | 改正育児・介護休業法成立 | 2022年10月開始 |
| 少年法改正 | 改正法成立 | 2022年4月施行 |
| 重要土地等調査法 | 法律成立 | 2022年全面施行 |
| ALPS処理水の海洋放出 | 処分基本方針を決定 | 2023年8月放出開始 |
| 流域治水関連法 | 成立・一部施行 | 2021年11月全面施行 |
安倍政権から引き継いだもの
| 政策 | 菅政権での位置づけ |
|---|---|
| GIGAスクール構想 | 前政権で始動。コロナ禍で端末整備を加速 |
| RCEP交渉 | 長期交渉を引き継ぎ、2020年11月に署名 |
| Go To トラベル | 安倍政権で開始。感染拡大を受け2020年12月に全国停止 |
| 東京2020大会 | 延期決定を引き継ぎ、2021年に開催 |
退陣時点で段階を分けると、デジタル庁の発足と携帯電話の低料金プランは菅政権中に実施まで進みました。不妊治療の保険適用は菅政権で工程を決め、2022年4月に岸田政権下で開始。ALPS処理水は2021年4月に海洋放出の基本方針を決め、実際の放出開始は2023年8月です。2050年カーボンニュートラルは菅政権で国家目標と法的な基本理念を定め、その後のGX政策へ引き継がれました。
この政権は最終的に何を残したのか
行政改革では、デジタル庁が実際の組織として発足し、押印見直しや携帯料金競争も具体的な変化まで進みました。脱炭素では2050年カーボンニュートラルと2030年度46%削減という長期目標を政府方針に据え、その後のエネルギー・産業政策の前提になりました。
社会保障では、不妊治療の保険適用、75歳以上の一定所得者の2割負担、産後パパ育休など、菅政権で方針や法律を整え、次の岸田政権で施行された制度が目立ちます。制度を決めた政権と、実際に始めた政権が異なる典型です。
コロナ対応では2021年2月に国内接種が始まり、大規模接種、職域接種まで拡大しました。菅は総辞職時、人口の約70%が1回目、約60%が2回目の接種を終えたと説明しています。一方、2021年夏にはデルタ株で感染者が急増し、首都圏などで医療が逼迫しました。東京2020大会は開催されたものの、首都圏の多くの会場が無観客となりました。
経済と観光では、Go To トラベルは2020年12月から全国停止となり、菅政権中の全国再開には至りませんでした。政策ごとに見ると、実施まで到達した改革、次の政権へ持ち越した制度、危機対応の途中で終わった施策が混在した384日でした。
閣僚たちはその後どうなったか
菅内閣のメンバーの多くは、その後の岸田政権以降でも主要ポストを担いました。上川陽子は外務大臣、萩生田光一と西村康稔は経済産業大臣、河野太郎はデジタル大臣、坂本哲志は農林水産大臣、加藤勝信は厚生労働大臣や財務大臣を務めています。茂木敏充は菅内閣退任直後に自民党幹事長へ移りました。
一方、岸信夫は2023年に衆議院議員を辞職。小此木八郎は2021年6月に大臣を辞めて横浜市長選へ出馬し、落選後は国政へ戻りませんでした。橋本聖子は大臣から東京2020組織委員会会長へ移り、同じ政策課題に政府側と大会運営側の両方から関わりました。
菅政権の主要政策を時系列で見る
- 2020年9月16日 菅内閣発足。
- 2020年10月26日 2050年カーボンニュートラルを表明。
- 2020年11月15日 RCEP協定に署名。
- 2020年12月 大手通信各社が低料金プランを相次いで発表。
- 2020年12月15日 全世代型社会保障改革の方針を決定。
- 2020年12月17日 小学校35人学級で財務・文科両相が合意。
- 2020年12月18日 イージス・システム搭載艦の整備方針を閣議決定。
- 2020年12月25日 グリーン成長戦略を策定。
- 2020年12月28日 Go To トラベルを全国一斉停止。
- 2021年2月17日 国内で新型コロナワクチン接種開始。
- 2021年2月18日 橋本聖子が五輪相を退任し、丸川珠代が後任に就任。
- 2021年3月12日 初のQuad首脳会合。
- 2021年3月26日 第6期科学技術・イノベーション基本計画を閣議決定。
- 2021年4月13日 ALPS処理水の処分基本方針を決定。
- 2021年4月16日 菅・バイデン日米首脳会談。
- 2021年4月22日 2030年度温室効果ガス46%削減目標を決定。
- 2021年5月 デジタル改革関連法、改正少年法などが成立。
- 2021年5月24日 自衛隊大規模接種センターで接種開始。
- 2021年6月25日 小此木八郎が退任し、棚橋泰文が後任に就任。
- 2021年7月 東京2020オリンピック開幕。首都圏の多くの会場は無観客。
- 2021年9月1日 デジタル庁発足。
- 2021年9月30日 緊急事態宣言・まん延防止等重点措置を全面解除。
- 2021年10月4日 菅内閣総辞職。
菅政権の後、日本政治は岸田文雄、石破茂、高市早苗へと続きました。現在の内閣については「高市内閣の19人と担当政策」で、同じく各閣僚の経歴と担当政策を追っています。
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