虎ノ門ヒルズとイルミネーション散歩|江戸見坂・大倉集古館を巡る歴史散歩

虎ノ門ヒルズの高層棟と低層部

虎ノ門は、江戸城の外郭門に由来する地名を残しながら、武家地、近代の文化施設、戦後のオフィス街、大規模再開発へと姿を変えてきた街です。2024年12月12日にゆる歴史散歩会で歩いたルートをたどると、東京ワールドゲートから大倉集古館、江戸見坂を経て、虎ノ門ヒルズの4つのタワーへと、江戸から現代までの都市の変化を一度に見ることができます。

2024年冬には「TORANOMON HILLS CHRISTMAS 2024」が11月23日から12月25日まで開かれ、T-デッキやステップガーデンにも季節限定のイルミネーションが登場しました。夜の光を楽しみながら歩くと、かつて江戸市街や海を見渡した高台の地形もよく分かります。

今回歩いたルート

東京ワールドゲート側の高台から大倉集古館、江戸見坂を通り、虎ノ門ヒルズの各街区へ下っていくルートです。リンクはGoogleマップです。

  1. TWG水辺テラス
  2. 大倉集古館
  3. 虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス
  4. 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
  5. 虎ノ門ヒルズ オーバル広場
  6. 虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー
  7. 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー
  8. 港区立西桜公園

「虎ノ門」の名は江戸城の門から残った

虎ノ門は、江戸城外郭に設けられた門の一つでした。門そのものは1873年(明治6年)に撤去されましたが、名称は停留所名などに残り、のちに町名として定着しました。港区は、江戸城の西に位置することから、四神思想で西を守る「白虎」にちなむ名称とする説を紹介しています。

虎ノ門の碑
虎ノ門の碑。撮影:Aimaimyi/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

江戸城に近い虎ノ門周辺には大名屋敷や武家地が広がりました。現在の高層ビル街を歩いていても、坂道や敷地の高低差には江戸以来の地形が残っています。虎ノ門から新橋へ続く江戸城外堀や近代史は、「虎ノ門と新橋の史跡巡り」でも詳しく紹介しています。

広重が描いた虎ノ門の夜景

歌川広重うたがわひろしげは1857年(安政4年)、『名所江戸百景 虎の門外あふひ坂』に虎ノ門外の月夜を描きました。画面には葵坂周辺の道、水辺、屋敷、夜道を行く人々が配され、江戸の夜の空気が伝わります。

歌川広重 名所江戸百景 虎の門外あふひ坂
歌川広重『名所江戸百景 虎の門外あふひ坂』(1857年)。国立国会図書館デジタルコレクション由来/Public Domain

今回のルートにある江戸見坂は、江戸の市街が発達してから町の大半を見渡せたことが名の由来です。近くの汐見坂は、江戸時代中期以前には海を望めたことから名づけられました。現代の高層ビルの間に立つと見通しは大きく変わっていますが、坂の勾配そのものがこの一帯の高台と低地の境を伝えています。

東京ワールドゲート―虎ノ門パストラル跡地の再開発

散歩の出発地点にしたTWG水辺テラスは、森トラストが開発した東京ワールドゲートにあります。中心施設の神谷町トラストタワーは2020年3月に竣工した地上38階、地下3階の複合施設です。森トラストは2008年に「虎ノ門パストラルホテル」を取得し、その跡地を含む街区で再開発を進めました。

東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー
東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー。撮影:Sakura Torch/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

すぐ近くに森ビルの虎ノ門ヒルズがあるため名前が混同されやすいものの、東京ワールドゲートを開発した森トラストと、虎ノ門ヒルズを開発する森ビルは現在別の企業グループです。両社の創業家と再開発の考え方の違いは、「森ビルと森トラストの違いとは?森一族が変えた東京の再開発史」で整理しています。

大倉集古館―実業家が残した日本最古の私立美術館

大倉喜八郎おおくらきはちろうは、明治・大正期を代表する実業家の一人です。1902年(明治35年)、自邸内に大倉美術館を開き、1917年(大正6年)には所蔵品、土地、建物、維持基金を寄付して財団法人大倉集古館を設立しました。現在の大倉集古館は、現存する日本最古の私立美術館とされています。

大倉集古館の外観
大倉集古館。撮影:Wiiii/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

最初の建物は1923年の関東大震災で失われました。残った作品をもとに再建が進み、建築家・伊東忠太いとうちゅうたが設計した耐震耐火の陳列館が1928年(昭和3年)に開館しました。近代の実業家が集めた美術と、震災後の建築が同じ場所に重なっている点も、虎ノ門の高台を歩く面白さの一つです。

68年越しの道路計画から生まれた虎ノ門ヒルズ

虎ノ門ヒルズの出発点は、2014年に開業した森タワーです。森タワーは、建物の地下を環状第二号線が通る「立体道路制度」を活用し、道路と超高層ビルを一体で整備しました。新橋―虎ノ門間の環状第二号線は、戦後まもなくの都市計画決定から68年を経て2014年3月に開通しています。

その後、2020年にビジネスタワー、2022年にレジデンシャルタワー、2023年10月にステーションタワーが加わりました。道路、地下鉄、歩行者デッキ、広場、緑地を一体化した街へ段階的に拡張してきたため、同じ「虎ノ門ヒルズ」でも各タワーの成立時期と役割は異なります。

虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー。撮影:Kakidai/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

森タワー

2014年開業。環状第二号線と超高層建築を一体化した虎ノ門ヒルズの起点です。低層部のオーバル広場は、道路を立体化したことで地上に生まれた歩行者空間と緑の象徴的な場所になっています。

ビジネスタワー

2020年開業。地下通路で日比谷線虎ノ門ヒルズ駅や銀座線虎ノ門駅へつながり、バスターミナルも備えます。低層部には西桜公園が整備され、周辺の歩行者動線と緑地をつなぐ役割を担っています。

レジデンシャルタワー

2022年竣工。住宅を中心としたタワーが加わったことで、虎ノ門ヒルズは働く場所だけでなく、暮らしを含む複合都市へ広がりました。

ステーションタワーと虎ノ門ヒルズ駅

2023年10月にステーションタワーが開業し、街は桜田通りをまたいで東西につながりました。東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅はそれに先立つ2020年6月6日に開業しています。日比谷線では1964年の全線開業以来56年ぶりの新駅でした。駅と再開発を一体で整備したことが、現在の虎ノ門の回遊性を大きく変えています。

虎ノ門ヒルズから麻布台ヒルズまで、森ビルの「ヒルズ」を続けて歩くルートは、「虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズなどをブラタモリ風にゆる散歩」でも紹介しています。

江戸の月夜から現代のイルミネーションへ

2024年の「TORANOMON HILLS CHRISTMAS 2024」は11月23日から12月25日まで開催され、T-デッキやステップガーデンで季節限定のイルミネーションが展開されました。今回の散歩日は12月12日で、江戸見坂の高低差を感じながら、現代の光に包まれた虎ノ門ヒルズへ進むルートになりました。

広重が描いた1857年の月夜から約170年。夜景の光源は提灯や月から高層ビルとイルミネーションへ変わりましたが、坂の上から街を眺めるという体験は今も残っています。

西桜公園まで歩くと、再開発の全体像が見える

終点の西桜公園は、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーの整備とあわせて設けられた緑地です。森タワーのオーバル広場、レジデンシャルタワー周辺の緑、ステーションタワーの歩行者空間へと歩くと、虎ノ門ヒルズが単独の高層ビルではなく、道路、駅、広場、公園をつなぐ街区として計画されたことが分かります。

参考資料