【開催レポート】国立西洋美術館の無料観覧日へ|「クロード・モネ没後100周年」を42名で鑑賞

国立西洋美術館のクロード・モネ没後100周年展示室で作品を鑑賞する様子

2026年8月9日(日)10時30分から、東京・上野の国立西洋美術館で「初心者歓迎🌻無料の日に国立西洋美術館にいってみよう」を開催しました。今回は1回1時間、2回に分けて実施し、全体で42名が参加しました。

前回の開催時もモネ作品が多く展示されていましたが、今回は特集展示「クロード・モネ没後100周年」の会期中。国立西洋美術館が収蔵・寄託するモネ作品をまとめて見られる機会に、19世紀以降の西洋美術を中心に鑑賞しました。鑑賞前後には、ゆる歴史散歩会で作成した「国立西洋美術館で学ぶ西洋美術史」を予習・復習用の資料として活用。参加者からも、事前に読んだり展示を見ながら確認したりできて分かりやすかった、という声がありました。

上野公園で国立西洋美術館イベントの参加者がグループに分かれて自己紹介する様子
上野公園で集合し、グループに分かれて自己紹介。今回は1時間ずつ2回に分け、全体で42名が参加しました。

上野公園で集合、グループに分かれてスタート

まずは上野公園で集合し、グループに分かれて自己紹介。42名という人数でしたが、2回に分けて開催したことで、それぞれ1時間のなかで作品を見ていきました。

今回は19世紀以降の作品を中心に鑑賞しました。印象派の作品は、細かな知識を暗記してから見るよりも、「光はどう描かれているか」「近くで見た筆触と離れて見た印象はどう違うか」「同じ画家でも時期によって何が変わるか」といった観察点を持つと、初心者でも比較しやすくなります。

国立西洋美術館で19世紀以降の西洋絵画を鑑賞する来館者
国立西洋美術館の展示室で19世紀以降の作品を中心に鑑賞しました。

なお、展示作品は入れ替わるため、このレポートで紹介する構成が今後も同じとは限りません。訪問前には国立西洋美術館の公式情報をご確認ください。前回2026年7月12日の無料観覧日の様子は、「国立西洋美術館の無料観覧日で『ほぼモネ展』を楽しみました」でも紹介しています。

【特集展示】クロード・モネ没後100周年

2026年は、印象派を代表する画家クロード・モネ(1840–1926)の没後100年です。国立西洋美術館では2026年7月22日から9月23日まで、新館2階の常設展示室内で特集展示「クロード・モネ没後100周年」を開催しています。公式案内によれば、同館が収蔵・寄託するモネ作品をまとめ、保存上の理由から展示機会が限られる素描や、2025年に新たに寄託された絵画を含む19点を展示する企画です。

国立西洋美術館「クロード・モネ没後100周年」特集展示の会場入口
2026年7月22日から9月23日まで開催の特集展示「クロード・モネ没後100周年」。

国立西洋美術館とモネの関係をたどると、1921年に松方幸次郎まつかたこうじろうがフランスのジヴェルニーにモネを訪ねたことに行き着きます。松方がモネ本人から直接入手した《睡蓮》などは、1959年の開館以来、同館のコレクションを代表する作品となってきました。つまり今回の特集は、人気画家の記念展示であるだけでなく、国立西洋美術館そのものの成り立ちにも深く結びついた展示です。

国立西洋美術館のクロード・モネ没後100周年展示室で作品を鑑賞する様子
モネ作品が並ぶ展示室。収蔵・寄託作品をまとめて見られる貴重な機会です。

今回の鑑賞では、作品ごとの題名や年代だけでなく、モネが繰り返し同じ場所や主題を描きながら、天候や時間によって変化する光と色をどう捉えたかにも注目しました。壁一面に作品が並ぶと、単独で見るとき以上に、色調や筆触の違いを比較できます。

国立西洋美術館のモネ作品展示室と鑑賞する来館者
モネの風景画を見比べながら、光や色彩、筆触の変化に注目しました。

《ウォータールー橋、ロンドン》を見る

写真6枚目はモネの《ウォータールー橋、ロンドン》。モネはロンドン滞在中、テムズ川に架かるウォータールー橋を繰り返し描きました。橋そのものの形を克明に記録するというより、霧や煙、大気のなかで刻々と変わる光を追うことが重要な見どころです。近くでは筆触や色の重なりを、少し離れてからは橋や水面、大気が一体となる見え方を比べると楽しめます。

クロード・モネ「ウォータールー橋、ロンドン」の展示作品
クロード・モネ《ウォータールー橋、ロンドン》。霧や光のなかで変化する都市景観を描いた作品を鑑賞しました。

《睡蓮》へつながる、ジヴェルニーの庭

モネの晩年を代表する主題が《睡蓮》です。水面に映る空や樹木、浮かぶ睡蓮を描くことで、従来の風景画にあった明確な地平線や遠近感が弱まり、画面全体が色と光の広がりとして見えてきます。今回の展示では、モネのさまざまな時期の作品を続けて見ることで、風景の捉え方がどのように変化していったのかを比較できました。

国立西洋美術館でモネの睡蓮などを鑑賞する展示室の様子
《睡蓮》など、モネを代表する主題の作品も鑑賞しました。

前回もモネ作品の充実ぶりに驚きましたが、今回は没後100周年の特集展示としてまとまっており、参加者と一緒に見るには格好の機会でした。しかもこの日は無料観覧日。これだけの作品を無料で鑑賞できる機会を、みんなで楽しみました。

松方幸次郎について

松方幸次郎まつかたこうじろう(1866–1950)は、川崎造船所の初代社長を務めた実業家で、国立西洋美術館の核となる「松方コレクション」を築いた人物です。国立西洋美術館によると、松方は元首相・松方正義の三男で、アメリカ留学やヨーロッパ遊学を経て帰国し、1896年に川崎造船所の初代社長に就任しました。

松方が西洋美術を集めた背景には、日本の若い美術家たちが本物の西洋美術に触れられる場をつくりたいという構想がありました。第一次世界大戦期の好況を背景に、1910年代後半から1920年代にかけてヨーロッパで絵画や彫刻を大量に収集します。モネ本人を訪ねて作品を購入したことも、その収集活動の重要な一場面です。

しかし、そのコレクションがそのまま日本へ届いたわけではありません。経済状況の悪化などから散逸した作品があり、ロンドンに保管されていた作品群は火災で失われました。一方、フランスに残された作品群は第二次世界大戦後、敵国財産としてフランス政府の所有となります。この「フランスに残った松方コレクション」が、のちの国立西洋美術館設立へ直接つながっていきました。

国立西洋美術館ができた経緯

国立西洋美術館は1959年、フランス政府から日本へ寄贈返還された松方コレクションを保存・公開するために設立されました。ここで重要なのは、単に「松方の作品が戻ってきたので美術館を建てた」というだけではなく、返還をめぐる日仏間の交渉が美術館建設の契機になったことです。

1951年のサンフランシスコ平和条約によってフランス側の所有となった作品について、日本政府は返還を要請しました。1953年にはフランス側から、東京にフランス美術館を創設することが返還の不可欠な条件であるとの要望が示され、日本政府は美術館設置の準備を進めます。1954年には国立美術館の新設と上野公園内への建設が決まりました。

建築設計者に選ばれたのは、近代建築を代表する建築家ル・コルビュジエです。日本側では坂倉準三さかくらじゅんぞう前川國男まえかわくにお吉阪隆正よしざかたかまさが協力しました。1959年1月に松方コレクションの寄贈返還が正式調印され、同年3月に建物が落成、6月に一般公開されています。本館は2007年に国の重要文化財となり、2016年には「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の構成資産として世界遺産に登録されました。

こうした経緯を知ると、モネの作品を見る体験が、美術史だけでなく近代日本の産業史、収集史、戦後の日仏関係、そして建築史へも広がります。西洋美術史の初心者向け解説記事では、国立西洋美術館の作品を手がかりに、後期ゴシックから20世紀美術までの大きな流れもまとめています。

最後は庭で感想共有タイム

1時間の鑑賞後は庭に集まり、感想共有タイムを設けました。一人で美術館へ行くと、作品を見てそのまま帰ることもありますが、誰かの感想を聞くと、自分とは違う見方に気づけます。今回も最後に集まり、それぞれが印象に残った作品や見どころを共有して楽しみました。

国立西洋美術館の庭でイベント参加者が感想を共有する様子
鑑賞後は庭に集まり、グループで感想共有タイムを楽しみました。
国立西洋美術館の庭で感想共有をするイベント参加者
同じ作品でも注目した点は人それぞれ。最後に感想を共有してイベントを締めくくりました。

事前に作成していた解説資料が、予習にも現地での確認にも役立ったという声をいただけたのもうれしい点でした。美術史に詳しくなくても、時代の流れや数個の観察ポイントを知っているだけで、展示室で見えるものは増えていきます。

まとめ|モネから美術館の歴史までつながる鑑賞会でした

今回は、国立西洋美術館の無料観覧日に合わせ、2回・全42名で19世紀以降の西洋美術と「クロード・モネ没後100周年」を鑑賞しました。モネの光と色を実物で見比べるだけでなく、松方幸次郎の収集、松方コレクションの戦後史、そして国立西洋美術館の設立まで知ると、「なぜ上野でこれほど充実した西洋美術を見られるのか」も立体的に分かります。

ゆる歴史散歩会では、歴史や美術に詳しくない方、一人参加の方でも楽しみやすい街歩き・文化イベントを開催しています。次回の鑑賞前の予習には、「国立西洋美術館で学ぶ西洋美術史」もぜひご活用ください。

参考資料