2026年2月11日(水・祝)17時30分から、ゆる歴史散歩会の「カシミール料理の店にいこう【世界の料理を食べ歩く会】」を開催しました。参加者は13人。会場は東京都中野区の「カシミールレストランKhana 江古田店(カナ)」です。たくさんの料理を注文して、カレーや焼きたてのパンなどをみんなで味わいました。特に印象に残ったのは、羊の脳みそを使ったカレー。食卓の写真とともに、カシミールの食文化や江古田の歴史も紹介します。
カシミール地域とカシミール料理
カシミールは、ヒマラヤ山系の北西部に位置する山岳地域です。広い意味でのカシミールには複数の行政地域が含まれ、インド・パキスタン・中国がそれぞれ一部を実効支配しています。山々に囲まれた谷や高原で育まれた食文化には、南アジアの食材と中央アジア・ペルシア方面の料理技法が重なってきました。
代表的な特徴は、香辛料による香りの重ね方と、羊肉・鶏肉・ヨーグルト・米などの使い方です。インド政府の観光案内では、羊肉を赤いソースで煮込む「ローガンジョシュ」、ヨーグルトを使う「ヤクニ」、ジャガイモ料理の「ダムアルー」などが郷土料理として紹介されています。赤い色合いには唐辛子などが使われますが、見た目の赤さだけで辛さを判断するより、香りや材料にも注目すると料理の違いが分かりやすくなります。
大勢で料理を囲む「ワズワン」
カシミールの宴席料理「ワズワン」は、数多くの肉料理を中心に構成される伝統的なごちそうです。ジャンムー・カシミール地方行政機関の解説によると、料理人「ワザ」が時間をかけて調理し、宴席では「トラエム」と呼ぶ大皿に盛られた料理を複数人で囲む習慣があります。肉団子を赤いソースで煮る「リスタ」、ヨーグルトのソースで仕上げる肉団子「グシュタバ」、羊のあばら肉を使う「タバクマーズ」などが知られています。
カシミールの食文化は一種類に統一されておらず、家庭や宗教的な慣習によって香味野菜や食材の選び方も変わります。国立ホテル経営・ケータリング技術評議会の食文化資料では、カシミールのヒンドゥー教徒とイスラム教徒の調理法の違いにも触れています。飲み物では、サフラン、カルダモン、シナモンなどを合わせるお茶「カフワ」も有名です。
今回の会食はワズワンの儀礼を再現したものではなく、東京のレストランでさまざまな料理を注文して楽しむ集まりです。大勢で異なる一皿を選べることは、この地域の豊かな食文化を知るきっかけになりました。
カシミールレストランKhana 江古田店(カナ)
会場の「カシミールレストランKhana 江古田店」は、東京都中野区江古田4-32-3にあるカシミール料理・インド料理の店です。店舗情報によると2024年10月12日に開店。最寄りは西武新宿線の沼袋駅で、徒歩約10分が目安です。住所に「江古田」が入っていますが、西武池袋線の江古田駅ではなく、沼袋駅を目印にするとアクセスを考えやすくなります。

夕方の店先には青いイルミネーションが灯り、ナンとカレーを描いた看板や写真入りのメニューが見えました。外から料理を選ぶ楽しさが伝わる、明るい店構えです。

店内は木を使ったカウンターと温かい照明が印象的。壁には蓄音機や古いミシンを思わせる装飾があり、カレーを食べる前から目を引きました。店のメニューにはナン、さまざまなカレー、サラダなどが並びます。カシミール固有の料理と、南アジアで広く親しまれる料理の両方に触れられるところも特徴です。
江古田という地名に残る中世の歴史
中野区の歴史解説によれば、江古田は1477年の「江古田原沼袋合戦」の史料に登場する古い地名です。この合戦では、太田道灌と豊島氏が衝突しました。地名の由来にはエゴノキ説と、かつて存在した寺院「江古寺」に由来する説があり、発掘調査で14~15世紀前半の寺院跡が見つかったことから、区は後者を有力と紹介しています。
料理を食べた中野区江古田は、こうした中世以来の地名が残る土地でもあります。店舗の営業時間や予約・メニューは変更されることがあるため、訪問前にはKhana江古田店の店舗情報で最新の案内を確認してください。
13人で囲んだ食卓|カレーとナンをいろいろ注文
この日は13人で多くの料理を注文し、さまざまな味を楽しみました。皿ごとにソースの色や濃さ、香草・野菜の盛り付けが変わり、食卓には次々と違った表情の料理が並びました。写真だけで正式名称や材料を特定しにくい品は、見た目を中心に紹介します。
クリーミーなソースと香ばしいパン

金属の器に入った一皿は、明るい黄色のソースに具材を重ね、緑の香草を散らした華やかな盛り付けでした。

焼き色の付いた大きなナンも登場。三角形に切り分けられたパンは、さまざまなソースを合わせながら食べるのにぴったりです。
赤褐色、黄色、濃い茶色――皿ごとに違う仕上がり

赤褐色のカレーには、トマトのような赤い具材や香草、細い白色のトッピングが見えます。料理の色を見比べるだけでも楽しい時間でした。

こちらは黄色いソースの料理。細切りの野菜や香草が添えられ、同じカレー料理でも色合いが大きく変わります。

大きな皿いっぱいに広がったナン。焦げ目や膨らみから、焼き上げたパンならではの質感が伝わります。

白い器には、細切りの野菜と香草がのった濃い色の料理が盛られていました。具材の切り方やトッピングにも、店ごとの工夫が感じられます。

白ごまを散らした丸い焼きパンも注文。切れ目の入った表面と、ごまの粒が印象に残る一皿でした。
卵やナッツを添えたカレー、羊の脳みそのカレーも

半分に切ったゆで卵をのせたカレーは、卵の白と黄身、赤褐色のソース、緑の香草が鮮やかな組み合わせです。

こちらのカレーには、ナッツや野菜が添えられています。香辛料の使い方だけでなく、トッピングで異なる食感を楽しめるのも魅力です。
そして今回、特に印象的だったのが羊の脳みそのカレーでした。羊の脳を食材にする料理は、日本では普段出会う機会が少ない一品です。カシミールを含む南アジアの料理店では「ブレインマサラ」と呼ばれる調理例も知られ、Khana江古田店を紹介する飲食記事にも同名の料理が登場します。今回は珍しい食材も含めていろいろな味を試したことが、会の思い出になりました。
メニューを眺める時間と、小さな揚げ生地の料理

メニューにはプレーンナン、ガーリックナン、チーズナン、肉料理、野菜のカレー、サラダなど多彩な選択肢がありました。大人数で訪ねると、ふだん自分一人では選ばない料理にも手が伸びます。

最後の写真には、小さな丸い揚げ生地の中に液体を入れた料理が写っています。一口サイズの器のような形もユニーク。カレーやパンとは違う食べ方を楽しめる品でした。
ほかの食文化を楽しむ開催レポート
インド料理の地域差に興味が湧いた方には、幡ヶ谷のタンジャイミールスで南インド料理を味わった開催レポートもおすすめです。米・豆・発酵料理を中心とした南インドの食文化を、写真とともに紹介しています。
各国の料理を楽しむ企画としては、JICA地球ひろばで世界の料理を楽しんだレポートもあります。東京の街で食を楽しむなら、ハッピーロード大山の食べ歩きレポートもあわせてご覧ください。新しい企画はイベント一覧で案内しています。
おわりに|食卓から知る世界の文化
13人でカシミールレストランKhana江古田店を訪れ、色も香りもさまざまな料理を注文した一夜でした。羊の脳みそのカレーを含む普段なじみの少ない料理に出会い、ナンやカレーの豊富さも楽しみました。地域の歴史や食文化を調べると、日常の一食から別の土地の暮らしを知る楽しみが広がります。
歴史スポットを自分で探したいときには、現在地や指定地点の近くにある史跡などを地図から探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリTimeWalkもご利用ください。
参考資料
- ジャンムー・カシミール地方政府 バドガム地区「Wazwan」(ワズワンの料理と宴席)
- インド政府観光案内「Srinagar – Food and Cuisine」(ローガンジョシュ、ヤクニ、ダムアルー)
- ジャンムー・カシミール地方政府 バドガム地区「Kashmiri Kahwa」(カフワと香辛料)
- インド国立ホテル経営・ケータリング技術評議会「Indian Food Heritage」(カシミールの食文化に関する論考)
- 中野区「なかの物語 其の三 いつから中野と呼ばれたのか?」(江古田の歴史と地名)
- 食べログ「カシミールレストランKhana 江古田店」(所在地・交通・開業日)
- セカイめし イン ジャパン「絶品!カシミール料理を作ってもらったよ」(店舗のブレインマサラ紹介)

