2026年10月10日、東京に新しい都市型文化芸術祭「ARTE TOKYO(アルテ・トーキョー)」が始まります。会期は12月31日までの83日間。臨海、日比谷・丸の内、代々木・渋谷の3つのコアエリアを中心に、現代美術、舞台、音楽、映画、イルミネーション、サーカス、都市体験が東京都内各地へ広がります。
特徴は、美術館や劇場の中だけで完結せず、公園、水辺、道路、駅、街路といった東京の都市空間そのものを文化の舞台として使うことです。幕末の砲台跡、明治生まれの都市公園、戦後の高速道路、1964年東京オリンピックの選手村跡など、時代ごとに役割を変えてきた場所が2026年にはアートの会場になります。
2026年9月11日時点で公式サイトには85件のプログラムが掲載されています。ARTE TOKYO主催のコアプログラムは一部参加アーティストが発表済みで、企画詳細は発表前です。
ARTE TOKYOとは?2026年に始まる東京の新しい文化芸術祭
ARTE TOKYOは、東京都と東京国際文化芸術祭実行委員会が主催する文化芸術祭です。初開催となる2026年は、10月10日から12月31日まで開かれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ARTE TOKYO(東京国際文化芸術祭) |
| 会期 | 2026年10月10日(土)~12月31日(木) |
| コアエリア | 臨海、日比谷・丸の内、代々木・渋谷 |
| 開催範囲 | 多摩・島しょを含む東京都内各地 |
| 主催 | 東京都、東京国際文化芸術祭実行委員会 |
| 主な分野 | 現代美術、舞台・演劇、音楽、映像、エンターテインメント、イルミネーション、都市体験など |
名称の「ARTE」は、ラテン語の「ARS(技芸・才能)」に由来し、イタリア語やスペイン語で芸術・アートを意味する言葉です。公式には、ARTを基軸としてTechnology、Entertainment、Experience、Engagement、Ecosystemなどが交わる場として位置づけられています。
なぜ東京都は新しい芸術祭を始めるのか
構想が表に出たのは2025年です。東京都は同年9月、2026年から秋冬の東京を舞台に国際文化芸術祭を開催すると発表しました。
背景には、東京には多数の文化イベントがありながら、それぞれが別々に開催されてきた状況があります。東京都は2025年の発表で、森記念財団の「世界の都市総合力ランキング2024」において東京が「文化イベント開催件数」で世界トップとなる一方、「文化・交流」分野ではロンドンやパリを追う位置にあると説明しました。
ARTE TOKYOは、すでに東京に存在する展覧会、映画祭、舞台芸術、デザインイベント、イルミネーションなどを結び、新しい企画も加えながら、秋冬の東京全体を一つの文化体験として見せる仕組みです。
成立までの流れを追うと、芸術祭の性格が分かりやすくなります。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2025年9月 | 東京都が2026年から国際文化芸術祭を開催すると発表 |
| 2025年12月 | 臨海エリアの中心となる国際美術展「TOKYO ATLAS」の名称と概要を発表 |
| 2026年4月 | 芸術祭全体の名称「ARTE TOKYO」を発表 |
| 2026年7月 | 参加アーティスト、ハイライト、パートナープログラムなどを発表 |
| 2026年10月10日 | 第1回ARTE TOKYO開幕 |
東京2020大会に向けて展開された文化プログラムの一部をリバイバルする方針も示されています。過去の文化事業を引き継ぎながら、新しい都市型芸術祭へ再編する試みでもあります。
コア・ハイライト・パートナーの3層で東京をつなぐ
ARTE TOKYOのプログラムは、大きく3つに分かれます。
| 区分 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| コアプログラム | ARTE TOKYOが主催し、3つのコアエリアで展開する中核企画 | 詳細発表前 |
| ハイライトプログラム | 官民の団体が主催し、各コアエリアを象徴する企画 | TOKYO ATLAS、Hibiya Art Park 2026など |
| パートナープログラム | 都内各地の文化芸術活動が参加 | 六本木アートナイト、アートウィーク東京、東京国際映画祭など |
2026年9月11日時点の公式プログラムページでは、音楽&パフォーマンス19件、パブリックアート7件、メディア&エンターテインメント9件、展示27件、都市体験23件の計85件が掲載されています。
この85件には大型の既存イベントも含まれます。新しく制作されるコアプログラムと、各地ですでに育ってきた文化イベントを同じプラットフォームにつなぐことが、ARTE TOKYOの大きな特徴です。
臨海エリア|幕末の砲台跡から国際美術展へ
臨海エリアでは、お台場、青海、天王洲などの水辺と大規模な都市空間が舞台になります。中心的な企画が国際美術展「TOKYO ATLAS」です。
お台場の歴史は幕末にさかのぼります。1853年のペリー来航後、江戸幕府は江戸湾防衛のため品川沖に砲台を築きました。その一つである第三台場が現在の台場公園です。幕末の軍事施設として造られた人工島が、170年以上後には国際美術展の会場になります。
TOKYO ATLASは台場公園・お台場海浜公園だけでなく、青海、天王洲へ展開します。通常とは異なる空間では、青海南ふ頭公園内の地下駐車場も展示会場に使われます。
臨海エリアには東京アクアシンフォニーなどのハイライトプログラムも加わります。実際のお台場の夜景や水辺の雰囲気は、「お台場ランタンナイトと海辺の夜さんぽ」開催レポートでも紹介しています。
日比谷・丸の内|近代公園と戦後の高速道路がアート空間に変わる
日比谷・丸の内エリアでは、公園、オフィス街、イルミネーション、旧高速道路など性格の異なる都市空間がつながります。
日比谷公園の土地には江戸時代に大名屋敷が並び、明治になると陸軍の練兵場として使われました。1903年に開園した日比谷公園は、日本の近代都市公園を代表する存在となります。公園の成立と園内の史跡は、日比谷公園の歴史と見どころで詳しく紹介しています。

2026年11月13日から29日には、ARTE TOKYOのハイライトプログラム「Hibiya Art Park 2026『Timeless Phenomena―確かにありそうなもの―』」が開催されます。会場は日比谷公園、時間は9時から21時。公園が刻んできた時間と自然、人間の身体感覚をテーマに、作品を園内に配置する計画です。
もう一つ注目されるのが東京高速道路、通称KK線です。東京高速道路株式会社は1951年に設立され、1959年に土橋―城辺橋間の供用を開始、1966年に全線がつながりました。道路下の賃貸収益を道路の建設費や維持管理費に充て、無料の自動車専用道路を運営する独特の事業方式でした。
KK線は2025年4月5日、東銀座出口を除く道路としての役割を終えました。現在は高架施設を歩行者中心の公共空間へ転換する「Roof Park Project」が進んでいます。ARTE TOKYOでもKK線を使うアートイベントがハイライトプログラムとして予定されています。

丸の内の街づくりと東京駅周辺の再開発については、丸の内・大手町を歩く|東京駅保存と容積移転で読む再開発入門もあわせて読むと、エリアの変化を立体的に追えます。
代々木・渋谷|練兵場、米軍住宅、五輪選手村を経た公園
代々木公園は、東京の土地利用の変化が一か所に重なった場所です。現在の公園一帯は陸軍代々木練兵場となり、戦後は米軍宿舎のワシントンハイツ、1964年東京オリンピックでは選手村として使われました。その跡地を整備し、1967年に代々木公園が開園しました。

ARTE TOKYOでは、代々木公園A地区を舞台にした「代々木公園×夜間の魅力創出」がハイライトプログラムに位置づけられています。2026年9月11日時点では11月上旬からの開催予定で、詳しい内容は発表待ちです。
渋谷駅、公園通り、代々木公園、原宿、表参道へ人の流れをつなぐ構想も示されています。冬の渋谷の街歩きと再開発については、渋谷イルミネーション散歩|再開発と街の歴史をたどる夜コースで現地の変化を紹介しています。
TOKYO ATLASとARTE TOKYOの違い
ARTE TOKYOとTOKYO ATLASは同じ時期に情報が発表され、名称を目にする機会も重なっています。役割を分けると明快です。
| ARTE TOKYO | TOKYO ATLAS | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 東京全体を舞台にした文化芸術祭 | ARTE TOKYOの臨海エリアを代表する国際美術展 |
| 会期 | 2026年10月10日~12月31日 | 2026年10月10日~12月20日 |
| 主な場所 | 臨海、日比谷・丸の内、代々木・渋谷+都内各地 | 台場、青海、天王洲 |
| 分野 | 美術、舞台、音楽、映画、ライトアップ、都市体験など | 現代美術を中心とした国際美術展 |
| 料金 | 各プログラムによる | 観覧無料、一部有料プログラムあり |
TOKYO ATLASの会場は、台場公園・お台場海浜公園、テレコムセンタービル、青海南ふ頭公園とその地下駐車場、アイルしながわ、WHAT MUSEUMです。開場時間は10時から17時で、月曜休場を基本とします。
TOKYO ATLASは、成り立ちの異なる複数の場所を移動しながら作品と東京の風景を体験する構成です。ARTE TOKYOが掲げる「都市を舞台にする」という考え方を、現代美術で最も分かりやすく体験できる企画の一つです。
夜の浜離宮とARTE TOKYO CIRCUS
ARTE TOKYO独自の企画として、夜の浜離宮恩賜庭園を舞台にしたアートプロジェクトも発表されています。
浜離宮の歴史は1654年、徳川将軍家が鷹狩りに使っていた海辺を埋め立て、「甲府浜屋敷」と呼ばれる別邸が築かれたことに始まります。のちに将軍家の浜御殿となり、明治維新後は皇室の離宮、1946年から都立庭園として一般公開されました。2026年は開園80周年にあたります。

ARTE TOKYOでは、この80周年と第1回開催を記念して夜間の庭園を生かした特別企画を実施します。2026年9月11日時点では作品や最終的な開催日時の詳細が発表前です。浜離宮周辺の水辺と埋立ての歴史は、築地川跡を歩く|築地本願寺から銀座・浜離宮へでもたどれます。
街なかを舞台にする「ARTE TOKYO CIRCUS」も予定されています。現代サーカスや大道芸を都市空間やアート作品と組み合わせるサイトスペシフィックな企画で、臨海、日比谷・丸の内、代々木・渋谷の各エリアへ展開します。
85件から選ぶ、ARTE TOKYOの注目プログラム
現在発表されている企画は、美術展から映画祭、鉄道沿線のパブリックアート、茶会まで幅があります。全体像をつかむうえで特に関連性が高い企画を抜き出すと、次のようになります。
| プログラム | エリア・場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| TOKYO ATLAS | 台場・青海・天王洲 | 臨海エリアの国際美術展 |
| Hibiya Art Park 2026 | 日比谷公園 | 公園の歴史・自然と現代アート |
| KK線アートイベント | 日比谷・丸の内周辺 | 旧高速道路を文化空間として活用 |
| 代々木公園×夜間の魅力創出 | 代々木公園 | 夜の公園をアート空間として展開 |
| 東京アクアシンフォニー | 臨海 | 水辺と光を生かす都市体験 |
| 六本木アートナイト2026 | 六本木 | 街全体を使う既存の大型アートイベント |
| アートウィーク東京 | 都内各地 | 美術館・ギャラリーを回遊 |
| DESIGNART TOKYO 2026 | 都内各地・KK線など | デザインと都市空間 |
| MUSASHINO ART RAILWAY FESTIVAL | 武蔵野線沿線 | 鉄道駅と沿線地域を結ぶパブリックアート |
| 東京大茶会2026 | 浜離宮恩賜庭園ほか | 茶文化を歴史的空間で体験 |
品川歴史館では、TOKYO ATLASと連携する特別展「品川湾から東京港へ―未完の港湾都市―」も開催されます。幕末の台場建設から近代の東京港形成までを扱い、臨海エリアの風景がどのようにできたかを歴史側から補う展示です。
料金はプログラムごとに異なる
料金や予約方法は各プログラムごとに設定されます。
TOKYO ATLASは観覧無料で、一部に有料プログラムがあります。公園や街なかで展開される無料企画がある一方、美術館の展覧会、舞台公演、体験企画などには個別の料金が設定される場合があります。
開幕前はプログラム詳細の更新が続くため、参加日を決める段階ではARTE TOKYO公式サイトと各企画の公式ページで開催時間、料金、予約の有無を確認すると最新情報を把握できます。
歴史から見ると、ARTE TOKYOの街が違って見える
ARTE TOKYOの3つのコアエリアには、東京の都市史を象徴する場所が集中しています。
お台場では幕末の海防施設が国際美術展の会場になり、日比谷では大名屋敷と練兵場を経た公園に現代アートが置かれます。KK線では戦後の自動車交通を支えた高架道路が歩行者中心の空間へ変わり、代々木公園では軍用地、米軍住宅、五輪選手村、公園という土地の変化の先に夜間アートが加わります。浜離宮では江戸の将軍家の庭園が夜の芸術空間になります。
第1回のARTE TOKYOでは、東京の土地が過去に何に使われ、これからどう使われていくのかを、作品と街の両方からたどれます。2026年秋冬の東京では、歴史的な都市空間と新しい文化活動が同じ場所で重なります。
参考文献・公式資料
- ARTE TOKYO 公式「ABOUT」
- ARTE TOKYO 公式「PROGRAMS」
- ARTE TOKYO 公式「Gathering Day」レポート
- 東京都「令和8年秋冬、東京を舞台とした国際文化芸術祭を開催」
- 東京都「国際美術展の名称『TOKYO ATLAS』」
- 東京都「ARTE TOKYO」名称・概要発表
- 東京都「ARTE TOKYO 2026 ラインアップ等発表」
- TOKYO ATLAS 公式サイト
- 東京都公園協会「Hibiya Art Park 2026『Timeless Phenomena―確かにありそうなもの―』」
- 東京都公園協会「日比谷公園」
- 東京高速道路株式会社「KK線の歴史」
- 東京高速道路株式会社「東京高速道路(KK線)について」
- 東京都公園協会「代々木公園」
- 東京都公園協会「浜離宮恩賜庭園」
- 東京都公園協会「浜離宮恩賜庭園 開園80周年」
- 品川区「品川湾から東京港へ-未完の港湾都市-」
- MUSASHINO ART RAILWAY FESTIVAL 公式
- 東京大茶会 公式

